「美味いもん食いながら、思い出とか語り合って青春すんだよ!」
「ちょっと、薫に変な知識植え付けないでよ」
「うるせぇ〜」
いつも静かで少し寒いこの部屋に笑い声が響いた。煩いはずなのに嫌じゃない。胸がじんわりと熱くなる。
服の上から心臓の当たりをぎゅっと抑えた。
「にしても薫、凄かったよな〜。あんな難しい祝詞、もう覚えてんの?」
「別に……」
「でた! 薫の"別に"。褒めてんだからちょっとは誇らしげにすればいいのに」
「ほんとだよ。薫は凄いんだから」
芽までそんなふうに口を挟んできて押し黙る。
凄くなんかない、だってあの時、自分は皆が駆けつけていなければまた失敗する所だったんだから。
芽たちが来てくれていなかったら、また同じことを繰り返すことになっていた。
だから────。
「ま、駆けつけた俺らもナイスタイミングだったし、半分俺らのおかげってところもあるし、お礼は受け取ってやってもいいけど?」
妙にイラッとする顔でそう言った宙一。
喉まで出かかっていた言葉は綿菓子が溶けるようにしゅんと消える。
「あ、なんだよ薫その顔は!?」
「……やっぱ言うのやめた」
「はぁ? 何だよやっぱやめたって! 言えよ、最後まで言えよーッ!」