さも当たり前のようにそう言った芽に戸惑った。
だって昨日まで自分は一度もこいつらを待たなかった。我先にと社を出て振り返ることなく先に帰っていた。
普通だったらそんな奴、待とうなんて思わないはずなのに。
「困ってたら助ける、遅れてたら待つ、疲れてたら肩を貸す。それがクラスメイトなんだよ、薫」
肩で眠る嬉々に優しい目を向けた芽がそう呟く。
「一人で出来ないことは周りに助けを求めて、協力すればいいんだ。友達なんだから」
出来ないことは周りに助けを求める、芽の言葉を反芻する。
友達という言葉は知っていたけれど、どういうものなのかは分からなかった。これまでの人生で接してきた人間は両手で数えられる程度の大人しかいなかったから。
「あ、乗換駅ついたよ。嬉々、宙一起きて」
電車がホームに入って、芽は二人に声をかけた。
唸りながらもぞもぞと起きた宙一が、唇の端のヨダレを拭って大きく欠伸をする。
薫に寄りかかっていたことに気がつき「あ」と声を上げる。
「わりぃ薫。肩借りてたわ」
「……うん」
いつもなら無視するその言葉も、今はそこまで鬱陶しくなかった。