「え、なに急に? ちょっとヤダ、止めてよ!」

「何? え、ヤバいやつじゃね?」

「なんか変なのっ、やだ怖い!」

「ちょ、冗談きついって」



四人が不安げな顔で辺りを見回す。

次の瞬間、摂社の扉がまるで内側から叩いているかのように激しい音を立てて揺れた。

四人が悲鳴をあげて振り向く。


薫は目を見開いた。摂社の両脇に鎮座していたはずの小さな狛犬の姿がない。

どさりと重い荷物が落ちたような音とともに悲鳴が上がった。男のひとりが蹲って倒れている。


その喉元に、牙を立てて噛み付く狛犬の姿があった。社を守るために目覚めたらしい。


「おい藤田! どうしたんだよ、おいッ!」



もう一人の男が慌てた様子で倒れたその男の頬を叩く。狛犬の姿は見えていないらしい。

男は声が出ないのか、ヒュッと喉から空気が抜けるだけだった。

社頭に飾られた提灯に明かりが灯った。あやかし達の社が開いたらしい。影の色が濃くなって、暗闇が蠢き出す。



「ヤバいって、ここほんとにヤバいってッ!」

「だから私嫌だって言ったんじゃんッ!」


女子二人が抱きしめあいながらそう叫ぶ。