一瞬足を止めて思案して、やはり歩き出した。

夕拝が終われば神職が本殿から出てくる。社務所へ戻る途中で彼らに気が付いて声をかけるはずだ。

わざわざ自分から話しかける必要は無い。それに自分が声をかけることでもし彼らに"何かあったら"と思うと気が引けた。

気にしない事にして足を進めたその時、



「何これ、ちっちゃい神社可愛い〜」

「扉付いてるけど、開けてもいいの?」



参道の横にある、摂社(せっしゃ)に気付いたらしい。御祭神にゆかりのある神を祭る社だ。

一礼もせず五重の鳥居をズカズカと通り抜けた女子二人が興味深げに摂社の扉をガタガタと揺らして中を覗き込んだ。


思わず顔をひきつらせた。

摂社とはいえ神を祭る社、大きさは違えどその社は本殿と同じもの。粗末に扱っていいはずがない。

そんなことをすれば間違いなく、神の怒りに触れる。


薫はひとつ深呼吸をすると足を四人組に向けた。

大丈夫、問題ない。禄輪のオッサンや芽たちと話す時と同じように声をかければいい。



「あの、すみませ────」



地面に落ちる自分の影がぐわりと弧を描くように不自然に伸びだ。虫の音がピタリとやんで静寂が訪れる。

はっと顔をあげれば、夕日が最後の光を放って山にとぷりと隠れる瞬間だった。辺りが一瞬にして暗くなった。昼が終わり、夜が来る。



「え、何?」



一人が不安げに声を上げた。

異変を感じとったらしい。