結局一時間近くオーバーして、帰り支度が整った頃には空は赤く染っていた。
荷物を取りに戻ると会議室には誰もいなくて、皆は先に帰ったようだ。
本殿に手を合わせると溜息をつきながら参道を歩く。
今日はいつもよりも疲れた。今すぐ布団に飛び込みたい。
そんなことを考えながら肩からズレたカバンをかけ直したその時。
「へぇ〜、ここが例のいわく付き神社?」
「そうそう! 日が沈んだあとは絶対にたどり着けない幽霊神社!」
「何でも鳥居は見えてるのにマップ通りに歩いても絶対たどり着かないんだって」
「怖〜! でも見た目普通なんだね〜」
若い男女四人組が談笑しながら鳥居をくぐってきた所だ。
制服ではないけれど服装が若い、大学生くらいだろうか。
人のための社を閉じてあやかし達のための社を開けるための夕拝の神事が少し前に始まったばかりだ。もうあと二、三分もすれば妖達の時間になる。
表の鳥居は日が暮れる三十分前には立ち入り禁止の柵を設けているはずだが、それを乗り越えて入ってきたのだろう。