別に喧嘩をしてる訳じゃない。芽が一方的に自分へ腹を立てているだけだ。

そもそも芽が何に対し怒っているのかも分からないのだけれど、怒っていたところで別に気にならない。


「なぁ嬉々、あいつら感じ悪くない? 芽なんてピリピリしちゃって最近喧嘩っ早いし」



嬉々の肩に腕を回した宙一。問答無用でその腕をねじ上げられて宙一は悲鳴をあげてその場に蹲る。



「触んな阿呆が気持ち悪い」

「ひっでぇ! てか、友達として気にならねぇのかよ!」

「芽のあれが通常だ今までがやたら気色悪い態度だっただけだ」



嬉々と宙一が後ろで話す声が聞こえる。何となく耳をそばだてる。

どういうことだよ〜と騒ぎ立てる宙一に嬉々は面倒くさそうに息を吐いた。



「知らん本人に聞け。……でも昔はあんな善人ぶった奴じゃなかったんだよ芽は」

「善人ぶってんの?」

「少なくとも昔のあいつはもっと我儘で自由気ままなお坊ちゃんだった」

「え、何。じゃあ芽はキャラ変更したってこと? 中二病じゃん! ひゃ〜恥ずか……いでっ!」


また宙一の悲鳴があがって「聞こえてんだけど」と芽の苛立った声で口を挟んだ。

振り返ることなく先に社務所へ入った。