「えっと〜……お前らなんかあった?」
職場体験も後半に差し掛かり、朝拝に参加したあと社頭の掃き掃除を言いつけられて竹箒で参道を掃いていると、喧しいのだけが取り柄の宙一が恐る恐る手を挙げてそう尋ねた。
数日前から何となく感じていた空気の悪さにいよいよ耐えれなくなったらしい。
「何お前ら喧嘩したの?」
箒の柄に顎を宙一が呆れた顔で息を吐く。
「別にそんなじゃないし」
「だったら"別に"じゃなくて"してない"って言うだろ」
妙に鋭い指摘に露骨に嫌な顔をした芽はふいと顔を逸らした。
「ほえ〜、芽でもそんな子供っぽい態度取るんだな」
「宙一喧嘩売ってる?」
「売ってないって、純粋に感動したんだよ! 芽もちゃんと年相応の男の子だったんだなぁ〜」
「裏でお話しようか宙一」
芽に耳を引っ張られ宙一は悲鳴をあげた。
騒ぎを聞き付けた神職が社務所から出てきて、案の定説教を頂戴することになった。
解放された後、掃除道具を片付けていると芽が不機嫌な顔で物言いたげにこちらを見ているのに気付いた。
視線を逸らし、ひとり社務所へ歩き出す。