「薫はさ、宙一と嬉々のこと嫌いなの?」

「……え?」



唐突な質問に思わず聞き返した。



「あんまり関わろうとしないから、嫌いなのか苦手なのかなって」

「……それ、芽に関係ある?」

「あるよ。ふたりはクラスメイトだし、仲良くして欲しいでしょ」

「……意味、分かんない」



自分がそう呟けば芽はまた困ったように笑う。

逃げるように視線を逸らし木箱の木目をじっと見つめた。


同じ部屋に詰め込まれて一日机を並べて勉強しているだけの同い年の子供。出会ってまだ三ヶ月も経っていない。そんなよく知りもしない相手に好きも嫌いもない。

どうでもいい、本当にどうでもいい。強いて言うならば、迷惑さえかけられなければ何をしようが何を言おうが好きにすればいい。



「赤の他人でしょ」



禄輪は学校でしかできない経験があると言った。

でもここへ来て三ヶ月、その学校でしか出来ないことが未だに分からない。むしろ神修へ来てから、ルールの多い環境と制約の多い生活に辟易としていた。

まあ初めから、期待はしていなかったのだけれど。


「なんとも思わないしどうでもいい」

「なんとも思わないって……でも宙一達は仲良くしたいって思ってるよ」

「……いいよ、嘘つかなくて」