そして職場体験の日が来た。
自分たち中等部二年は神修からそこまで離れていない電車で20分程度のところにある社での奉仕が決まった。
自分以外は祭りの見学なんかで何度か尋ねたことがあるらしく、宙一が馬鹿でかい声で文句を言って斎賀先生の拳骨を食らっていた。
中等部の一年も今年はまねきの社で、三年や高等部の神社実習もどこも近場の社が実習先になっていた。
去年発生した妖による社の襲撃事件が原因らしい。
「薫、次その箱開けて」
「だーっ、何で! 俺らが! こんな事!」
「うるさい黙れ阿呆」
世話になる社の敷地の説明をざっと受けて奉仕報告の祈祷を済ませた後、社務所の中にある小さな会議室に詰め込まれた自分たちは大豆の袋詰め作業を延々と行っていた。二月の節分祭で参拝者に配布する福豆らしい。
いやぁ神修の学生さんたち、毎年いい時期に来てくれて助かるよ。
初老の禰宜頭がそう言った時に、自分以外の周りが露骨に嫌な顔をした理由がこれだったらしい。
「去年と全く同じじゃねぇかッ! 豆、豆、豆! 今年も豆!」
「まあ節分祭近いしね。僕も初等部上がる前はよく実家の社で手伝わされたし」
「口ではなく手を動かせ猿が猿の方がまだ役に立つぞ阿呆」
「あーっ嬉々! いっけないんだ〜いけないんだ〜! 呪の詞口にしちゃいけないんだ〜 斎賀っちょに言ってやろ〜」