結局最後は芽が折れて、その晩に金平糖を持って泣きながら謝りに来る流れが多かった。
この馬鹿みたいに能天気な宙一を中心に、教室はいつも煩かった。
早く帰りたい思う気持ちは、初日と変わらずずっとある。
「────おーい、めぐ……薫! 次振替授業で詞表現基礎だから演習場だぞ」
その日の三限目の終わり、頬杖をついてぼうっと黒板を見上げていたら、宙一が顔を覗き込んできた。
一瞥して溜息をつき視線を逸らす。
「あっ、今俺の顔みて溜息つきやがったな!? シツレーな奴!」
「宙一、置いてくよ」
「待てよ芽! 薫が誘ってんのに無視する!」
ジタバタとその場で足踏みした宙一に芽は困ったように笑う。
「薫は次自習だよ。ほら……次実習系の授業だし」
「あ、そっか。悪ぃ薫! じゃ、また後でな!」
ドタバタと教室を出ていったその後ろ姿をみらりと見れば、不安そうな表情を浮かべてこちらを見つめる芽と目が合う。
「……早く行けば」
「……うん」
また困ったように笑った芽は、名残惜しそうに教室を後にした。