「ごめんごめん。でも"なんで私"……か。説明するのが難しいんだけど、幸さんに出会ったその瞬間、"この人だ"って思ったんだ」

「何ですかそれ。結婚詐欺師の手口みたい」

「あははっ、辛辣だな〜。でもそうとしか言いようがないんだよ。俺の家ってちょっと変わっててさ、そういう直感とか霊感とか……感覚的な物を大事にするんだ」

「それは、お家が神社だから?」



まだ自分の家系の特殊性を説明するのは早い気がして「そんなところ」と曖昧に返す。



「実を言うとこれまでに散々お見合いの話が上がってきて、全部断ってたんだ。相手が悪い訳ではなくて、俺が"違う"と思ってしまったから」

「違う……?」

「そう。でも幸さんに出会った瞬間、体に雷が落ちたと思うほどの衝撃が走った。俗っぽい言い方をすると、一目惚れってやつかな」


大袈裟です、と幸はおかしそに肩をふるわせた。

そんな幸を隆永は微笑みながら見つめる。


初めはそんな衝動的な感覚でプロポーズをしたかもしれない。けれど今は、自分に正直で表情がコロコロと変わって、誰にでも平等に優しく極度の照れ屋な彼女が心の底から愛おしく思えた。