「今日からこのクラス────と言っても一クラスしかないが、このクラスに編入することになった神々廻薫くんだ。仲良くするように。ほら、時間やるから適当に交流深めろ」
人間の皮を被っている熊みたいだ。
中等部二年の担任門澤斎賀《さいが》に抱いた第一印象はそんな感じだった。ガタイのいい体に鋭い目付きはどこかの組員さながらだけれど、歴とした神職で神修の教員らしい。
遅刻したことで早速拳骨を頂戴し、禄輪のそれよりも強烈だったので直ぐに逆らうとまずい人なんだと理解した。
厳つい外見の割には学生には好かれているらしく「斎賀っちょ!」なんて気安く呼ばれていた。そう呼んでいるのは一人だけのようだけれど。
横一列に並べられた机で、右隣が芽そして自分で左隣はあの騒がしい迷惑な男だった。
「俺諏訪宙一! 小学校では"そらちー"って呼ばれてたんだけど、こいつら頑なに呼んでくれなくてさ。薫はそらちーって呼んでくれな。好きな食べ物は白米と白米に合うおかず、つまり食いもんなら何でも! あ、強いて言うなら中華好き! 趣味は漫画とゲームで、最近はマリオの八面クリアした! 薫マリオやったことある? 今度通信しようぜ〜。で、好きな女の子のタイプはポニーテールが似合ううなじの綺麗な子で……」
身を乗り出して矢継ぎ早にそう話す宙一の言葉を最初の一行以外は聞き流す。
「宙一、ちょっと落ち着きなよ。薫が迷惑そうな顔してる」
「分かってるって〜。芽と同じ顔だからその顔には慣れてる!」
「胸張って言うことじゃないでしょ」