そうして季節は巡り巡って、薫は十三歳になった。
最近では稽古で禄輪から注意されることもうんと減って、自分でも力の加減が分かってきた感覚がある。
言霊の力だけではなくて、必要なことは全て禄輪から教わった。
その日も座学の勉強を終えて、薫は机の上を片付けていた。
「薫、来月から学校に通いなさい」
「……え?」
あまりにも唐突な言葉に薫は目を瞬かせた。
「学校だよ、学校。同じ年頃の子供たちが集まって勉強したり運動したりする場所だ」
「いや、そんな事分かってるよ。なんで今更? ていうか学校って普通の?」
眉間に皺を寄せて聞き返せば、禄輪は首を振った。
「神役修詞中等学校。初等部から専科までの十四年生で、言霊の力を持った子供たちが集って神職になるための勉強をする場所だ」
「神修……」
「なんだ知ってたのか。ああ、それもそうか、芽が通っているしな」
芽、久しぶりに聞いたその名前に、胸が騒ぎだす。最後に会ったのはもう四年前だ。
「中等部の二年に編入という形で入学が許可されたんだ。来月からだから十月からだな。二学期には少し遅れるが、三年までの勉強は教えたし問題ないだろう」
「待ってよ……俺まだ行くなんて一言も……」
「通うべきだ、薫」
ぴしゃりとそう言った禄輪に、薫は怪訝な顔で禄輪を見上げる。