目を見開いた禄輪がカランと箸を落とした。
薫は眉間にぎゅっと皺を寄せて避けていた人参とピーマンをガツガツと口の中にかきこむ。
「お、おま……お前、さすがにオッサンはないだろ……」
禄輪は額を押えて息を吐く。俺ってもうそんな歳なのか、なんてブツブツと呟く姿がおかしくて、薫は小さく吹き出した。
禄輪が目を見開いて薫の顔を凝視する。
その視線に、居心地が悪くなってそっぽを向いた。
落ち込んでいたのかと思えば今度は機嫌よくニヤニヤと笑う禄輪に「……なに」と唇を尖らせる。
「何でもない。でもオッサンはさすがにやめろ。せめて禄輪のオッサンにしてくれ」
「……何にも変わんないでしょ」
「大違いだ! そもそも私はまだ三十前半だぞ、ほんの数年前までは二十代だったんだ。オッサンにはまだまだ程遠い!」
怒っているのか笑っているのかよく分からない顔で額を指で弾かれて、薫は「意味わかんない」と味噌汁を啜った。