そばに歩みよって膝を付いた。怯えた目が布団の隙間から自分を見あげる。



「薫……」



手を伸ばせば逃げるように身を縮めた。



「ダメ、ダメ……来ない────ッ」



不自然に言葉を止めた薫。

そっと布団を剥がせば、両手で自分の口を覆って大粒の涙をこぼす薫と目が合った。


薫は片方の手で禄輪の膝を押した。その目が「近付くな」と訴えている。




「薫、大丈夫だ。私は大丈夫だ。これまでもそうだっただろ? ほら」




薫の手を取り優しく握った。小さな手の甲を優しくさすれば、怯えたように身を引こうとする。

痛くないように、でも決して離さず手を握り続ける。


やがて薫の力がゆっくりと抜けていく。




「禄輪のおじさん……」

「ああ、そうだ。薫の事が心配で様子を見に来たんだよ」




そう言って微笑みかければ、薫の瞳からはたはたと大粒の涙が零れた。




「お……お母さんがッ……」

「ああ……」

「お母さんが、ぼくの、せいでッ」

「それは違う。幸さんが亡くなったのは薫のせいじゃない」



薫は首を振った。