大人になってもその名残でお互いの社を度々訪れていた。

結婚してからは隆永の妻の幸も同じように自分を可愛がってくれて、二人の間に双子が産まれてからは双子の遊び相手にもなった。


自分は生まれ持った言祝ぎが高く、呪を垂れ流してしまう薫にも関われる数少ない大人のひとりだった。

それもあって、幸からは良く薫についての相談が書かれた手紙を受け取っていた。



最後に受けとった幸からの手紙には、自分の亡き後薫の事を頼みたいという旨がしたためられていた。


縁起でもないことを言ってはいけない、そう書いた手紙を書いたはいいものの、忙しさのあまり送るのを忘れていた頃に届いたのが幸の訃報だった。



"禄輪くんも知ってると思うけど、あの人私の事大好きでしょ? だから多分私が居なくなったら、手の施しようがないほどのダメ人間になると思うのよねぇ"



記憶の中の彼女が苦笑いで肩を竦めてそう言う。手紙にはそうも書かれていた。



「幸さんの意志を尊重しませんか」

「……いいよ、別に。禄輪の好きにして」



反対される事はあっても、あっさりと了承するとは思ってもみなかった。

思わず戸惑い気味に「え?」と声を上げると、隆永は自嘲気味に笑う。