はは、と笑った隆永は重たい腰を上げて立ち上がる。
「で、どうした? 俺に用? 折角だからお茶飲んで行ってよ、幸も正月にお前に会えなくてガッカリしてたから顔見せてやって────」
言葉に詰まった隆永が笑った顔のまま固まった。笑っているはずなのに、またその頬に涙が流れる。
あなたの言う通りだ、と禄輪は懐に入れた手紙にそっと触れて眉根を寄せた。
「隆永さん、担当直入に言います。薫を俺のところに預けませんか」
「……薫を?」
「はい。正直、今の状態の隆永さんがちゃんと薫を正しく導いてやれるとは思いません。薫のような呪を多く持った子供は、幼少期の修行が一番重要なのは分かってらっしゃいますよね」
隆永の目から光が消える。またうつろな表情でぼんやりと自分を見た。
「……分かってるよ、そんな事」
「分かってるなら尚更、私に預けてください。幸さんもそれを望んでます」
「幸が……?」
「ええ。今年の正月が明けた頃に、手紙を頂いたんです」
隆永には学生時代、良く面倒を見てもらっていた。と言っても十は歳が離れていたから、自分が初等部の高学年になる頃には隆永は二年の専科の過程を終えて実家の社の禰宜になった。
会う機会はぐんと減ったが、顔を合わせれば小生意気な子供だった自分の相手をしてくれた。