頑なに顔を見せない芽に小さく笑って立ち上がった。
「真言さん、今から少しいいですか?」
「すまん、この後芽さまを神修へお送りする予定なんだ」
よく見れば芽は初等部の生徒を示す紺色の制服を身につけていた。
「夏休みは先週で終わってるんだが、バタバタしたもので今日からのご登校なんだよ」
「そうでしたか。なら後で結構です。隆永さんと薫にも用があるので、さきに会って来ますね。隆永さんは?」
「宮司は本殿に」
「様子はどうですか」
声を低くして尋ねれば、真言は眉根を寄せて力なく首を振る。
そうですか、と禄輪は息を吐いた。
行きましょうか、と芽の手を握った真言が歩き出す。手を引かれて歩き出した芽とは最後まで目が合わなかった。