幸、幸。

すぐ側で隆永が叫ぶように呼んでいる。



「幸、頼む、一緒に生きるって約束したろ……っ」



そうね、隆永さん。

そんな約束もしたね。確かあれは芽と薫が産まれる前に、今みたいに声を震わせて私に言ってくれた言葉だったね。

心の中でプロポーズみたいね、なんて思いながら笑ってたんだよ。



「頑張れ、幸、絶対助けるからっ……!」



二人を産むことを決めた時、それも約束してくれたね。隆永さんは言葉通り、私を助けてくれた。

そのおかげであんなに小さかった二人が、もうすぐ十歳になるんだよ。

遠くなる意識の中で聞いた二人の産声を私はきっと忘れない。あんなにも幸せに満ちた瞬間があるということを、隆永さんがいたからこそ知ることが出来た。


普通の出会いではなかったし普通の人生でもなかったけれど、普通じゃなかったからこそ私はずっと幸せだった。



「幸、幸……っ、愛してる……ずっと愛してるっ!」



何よ小っ恥ずかしい。子供たちの前でやめてよね。でも、うん。

私を選んでくれて、私を見つけ出してくれてありがとう。

私も愛してる。ずっとずっと、愛してる。



みんなの未来にどうか、たくさんの幸がありますように。