「お母さんっ、お母さん……!」
「お母さんッ!!」
聞こえてるよ、ここにいるよ。そう返事をしたいのに瞼も口も開かない。
あれほど感じていた痛みも不快感も寒さも感じない。手足の感覚もなかった。耳だけがはっきりと音を拾っていて、隆永も芽も薫も泣きじゃくっているのがわかった。
芽、薫。そこにいるのかな。
力一杯抱きしめてその頬を摩ってあげたいのに、できそうにないの。ごめんね。
その涙を拭って、大丈夫よと抱きしめてあげたいのに、体が言うことを聞かない。
ただとても疲れていた、眠る少し前と同じように意識がぼんやりしている。
「お母さんっ……ごめんなさい!」
「お母さん起きてよぉ……!」
あらまぁそんなに泣いて。二人とも、泣いてばっかりじゃダメよ。涙で目の前が曇ったら、進める道も上手く進めないんだから。
辛くてもぐっと耐え忍んでいれば、いつかきっと心から笑える日が来るんだから。
二人にはどんな未来が待っているんだろうね。どんな大人になるのかな。
どんな大人になってと良い。ただ自分らしく生きてさえくれれば。そしてたくさんの友達や家族や大切な人たちに囲まれて、毎日を笑顔で過ごしてさえくれたらそれでいい。
どうか二人の未来に、たくさんの芽生えと良い風が吹きますように。