「幸、おい幸! しっかりしろ!」 痛いんじゃないかと思うほど、隆永が強く幸の頬を叩いた。今までに見た事がないくらい怖い顔をしている。 目尻から涙を零しながら幸がゆっくりと目を開けた。焦点の合わない瞳に、体の芯が凍りつくような感じがした。 「幸……? 幸? 聞こえるか?」 今にも泣き出しそうな声だった。 隆永のそんな声を聞いたのは初めてだった。