呪を抑えなきゃ、呪を抑えなきゃ。じゃないと言霊が暴走しちゃう。

たかくてまるくてやさしい声、幸との約束が何度も脳裏を過ぎった。何度もその声を出そうと喉を搾っても、奥に痛みが走って尖って嗄れた声になる。


怖くなって顔を顰めた、目尻がじわじわ熱くなる。

芽は気付いてないかった。「その調子、上手くいってるよ、続けて!」とまだ応援している。

本当にこれで上手くいっているのだろうか、芽が奏上した時のような心地良さを自分の声から感じない。

身体中の肌が粟立った。



「百姓等が心足(こころた)らいに足らしめ給い、速やかに神験(みしるし)有らしめ給えと畏み畏みも白す────」



最後の一句を奏上した瞬間、鼓膜を突き破る勢いの激しい雷鳴が部屋中に響いた。