店仕舞いの時刻が近づき、レジ締めを手伝った隆永は帰り支度を整えていた。
「おい幸、ちょっと頼まれてくれ」
「どうしたの?」
「ラップを切らした。明日の仕込みで使うんだ。買い出し行ってくれるか」
「分かった。ついでに夕飯の買い物もしちゃおうかな」
いそいそとコートを取りに二階の自宅へ上がった幸の背中を見つめる。
「おい隆永、幸に付き合え」
「もちろんです。惚れた女を夜道一人で歩かせるわけには行きませんからね、お義父さん」
「まだ親方だ」
ふん、と鼻を鳴らした清志は厨房に戻って行った。
茶色のコートを作務衣の上に羽織った幸が降りてくる。まだ帰っていなかった隆永に目を瞬かせる。
「隆永さん、早く帰らないと遅くなりますよ。また真言さん怒るんじゃないですか?」
「もう暗いし一人じゃ心配だから、俺も買い物付き合うよ。真言には毎日怒られてるしどうって事ない」
「でも、家の買い物もするし……」
「なら尚更だ。荷物持ち要員ってことで」
「でも」と頬を染めて口篭る幸に、行くよと隆永は外に出た。