「それは、隆永さんもよね……?」

「俺? はは、そうだね。俺にも」


己の頬に触れる隆永の手に自分の手を重ねた。そしてその胸板に額を押し当てて体重を預ける。

静かに背中に腕が回された。



「薫は……大丈夫だよね?」

「心配しなくていいって言ったろ? 反感を持つ神職がいても、信託に選ばれた者が神主になる。それは絶対なんだ。皆が納得行くように、俺が薫を育てる。幸は安心して、俺らじゃ出来ない子育てに専念して」


薫が次代の神主に選ばれた日から、何度も同じ質問を繰り返した。

その度に隆永は嫌な顔をせずにその言葉を繰り返した。


大丈夫、安心して。


その言葉を聞く度に不安が少しずつ軽くなる。


隆永の着物をキュッと握って、擦り寄った。心地よい心臓の音が聞こえる。



「隆永さんは、大丈夫……? 真言さんから、何となく今どういう状況なのか聞いたの」

「真言から? 気にしなくていいよ、あいつは心配性だからあることないことなんでも大袈裟に言うんだ。俺は大丈夫」


本音の聞こえない声に幸が険しい表情で顔を上げたその時、隆永の頭が肩にとんと乗った。

いつも気を遣う力加減で触れてくるのに、今日はしっかりと隆永の体重を感じる。



「……って、言いたいとこだけど、正直ちょっとしんどいかな」