一生分、と繰り返し手のひらに残った数粒の金平糖を見下ろす。
一生分って神饌をお供えする三方が何個分なんだろう。
「神職のね、浄階っていう階級の人なんて、ミナトクのタワマンに住めるんだから!」
「ミナ、タワ……?」
「すっごく強くて偉い人なんだよ! みんなソンケーしてるんだ! みんなその人のこと褒めて、信じて、大好きなんだよ。……あっ!」
突然声を上げた芽。
「薫は神職の浄階になるべきだよ! それでみんなを見返してやればいいんだよ! あれ、でもそうしたら薫を守る僕は浄階よりも強くならなきゃいけないのか……浄階の上ってあるのかな?」
うーんと暫く首を捻るも、「まぁいいか!」と顔を上げる。
そうだね、それがいいよ。芽は何度もうんうんと頷いて立ち上がる。
「そうと決まればやっぱり特訓だよ! ね、教えた祝詞そろそろ試してみよっか!」
「いいの? お勉強の続きしなくて……」
「僕も全部覚える前に奏上しても出来たし、初等部3年生の最終課題だからそんなに難しくないから!」
ほら行こう、と薫の手を引いて駆け出した芽は鎮守の森を飛び出した。