「────薫しっかりして! お父さんに納得してもらうんでしょ!」


半開きの目で船を漕ぐ薫の肩を揺すった。ハッと我に返った薫はバツが悪そうに「ごめん」とみを縮める。

芽はもう、と息を吐くとパタンと教科書を閉じた。


「今日は終わろっか」

「いいの?」

「だって薫眠いんでしょ?」

「ごめんなさい……」

「別に怒ってないよぉ」



手を伸ばした芽が薫の頭をグリグリと撫でる。薫は目を瞑って肩を竦めた。

そのまま大きく伸びをしてどさりと後ろに寝転んだ芽。ポケットから巾着を取り出して「金平糖食べる?」と差し出す。

ひとつ頷いて手を差し出した。



「僕らいつになったら外出るの許してもらえるのかなぁ」

「芽を神主にしたい人が、いらいらしてるんだって……お父さんが"ほとぼりが冷めるまではダメだ"って」

「ほとぼりって何? 熱いの? 味噌汁の種類?」

「さぁ……でもまだダメってことでしょ……?」



はぁー、と大きなため息をこぼした芽は金平糖を宙に放り投げた。あーんと口を開けてキャッチする。

真似して放り投げた薫は、コツンと額に落ちて転がった。