身を乗り出した芽に戸惑う。
隆永からは自分がいない所で祝詞を練習したり奏上することを固く禁じられている。
それに今は自分のことで揉めている最中で、外に出ることも芽と遊ぶことも禁止されている。
「見つかったら、怒られちゃう」
「バレないようにこっそり抜け出してくるから。薫もこっそり出てくればいい」
そんなに上手くいくんだろうか。隆永のいいつけを守って、ほとぼりが冷めるまで待つ方がいいんじゃないか。
でも、もし。
もし、芽と練習したことで呪を上手く扱うことができるようになれば、本当に自分も神修に通うことが出来るかもしれない。
みんなが自分の力を認めてくれて、芽のようになれるかもしれない。
そんな淡い期待が背中を押した。
「……わかった、やる」
芽が目を見開いた。
そして満面の笑みで頷く。
「薫なら絶対できるよ!」
自分とは全然似ていなくて、似ていないからこそその口が紡ぐ言祝ぎが昔から少し苦手でそれ以上に好きだった。