「ねぇ薫、僕とここから出ていこう」
「え……?」
「ここにいたら、みんな薫のこと虐める。誰も守ってくれない」
「でもそんな事したら」
「僕がずっと薫を守るよ。薫を悲しませたりしない」
真剣な目だった。掴まれた両肩が痛い。
「そんなの、できないよ」
「できるよ。絶対できるもん、できる……からっ」
「できないもん……」
「薫のバカッ、できるったら……!」
ポロポロと涙を零した芽に、薫は困惑気味に目を伏せる。
芽だって、そんな事をできるわけがないのは分かっているはずだ。
「薫が泣いているところ、もう見たくないよ」
芽が手を伸ばして薫の手をぎゅっと握った。
「ねぇ早く神修に来て。そしたら僕が、いつでも薫を守ってあげられる」
「神修に……?」
「そうだよ。薫を守るために強くなって待ってるから」
じっと芽の顔を見つめる。
「夏休みが終わるまで、ここで秘密の特訓しよう。僕が習ったこと全部薫に教えるから、そしたらお父さんも神修に行くの許してくれるかもしれないよ」