隆永から大体の話は聞いている。

開門祭の初日、薫は御祭神による神託を受けて次の神主に選ばれたらしい。

こちらの社は現世の神社とは違い、世襲制や推薦によって神主は選ばれない。神主になれるのはその社の御祭神に選ばれた神職だけ。例外はない。

つまり御祭神に選ばれればその人は、神主になる以外の道がないということでもある。



世襲制では無いけれど、神々廻家は代々血族の中から次の神職が選ばれている。双子を身篭った時、いずれはこの子達も社を受け継ぐのだろうとは何となく思っていた。

けれどもこんな早くに、そして薫がその役目を賜るなんて思ってもみなかった。それによって薫への風当たりが強くなることも、みなまで想像出来ていなかった。


そして隆永もまた、その渦中に立たされている。

御祭神の神託とはいえ、呪しか持たない薫を時期神主として認めたくない親族や神職たちの反対意見は激しかった。

隆永のことを疑うような声も上がっているのだと真言から聞いている。


「幸は何も気にしなくていい。薫を守ってやって。それで芽のこともちゃんと見てあげて。あの子もあの子なりに、悩んでいるから」


深夜、疲れた顔で離へやってきた隆永はいつものように笑ってそう言う。

それでも不安げな幸に額に口付け、安心させるように薄い体を抱きしめた。