相応しくない、わくたかむの汚点、呪われた子。
離れから出ないようにと言われていても、そんな声は薫の耳に届いた。
「お母さん、どうして僕は呪しか持ってないの?」
薫から笑顔が消えた。
芽が初等部へ入学して競うように稽古にも力を入れて出し、幼い頃に比べて表情も豊かになってきた時期だった。
塞ぎ込むように一日中自室に篭っていた薫は、心配しておやつを持ってきた幸にそう訴えた。
「……ごめんね、薫」
自分の胸の中で静かに涙を流す薫に、幸はそれ以上の言葉が出てこなかった。
「なんで皆、僕なこと嫌うの……? 僕が呪しかないからだよね? だったたらこんな力いらない……ッ」
「ごめんね薫、ごめんね……でも薫のその力も、いつかきっと誰かを助けることが出来るから」
泣き疲れて膝の上で眠った薫の頬に残る涙のあとを拭った。
「あんな汚い言葉なんて、聞かなくていいの。貴方は素晴らしい子、貴方は尊い子。貴方は愛されている」
大好きよ、薫。ごめんね、薫。
どうか明日はあなたが、笑って過ごせる一日になりますように。
もう抱きかかえる事が出来なくなるほど大きくなった薫を布団に寝かせて額にかかる前髪をはらった。