「────誰かに会話を聞かれたのか……」 もう一度深く息を吐いた隆永が立ち上がった。 薫の手を握った隆永は大股で出口へ向かう。引っ張られるようにして歩き出した薫は「お父さん……!」と声を上げた。 「お父さん、僕芽と────」 「お母さんと離れにいなさい。外に出ないように。しばらくは稽古もできない」 手を引いて急ぎ足で社頭を横切る隆永を困惑気味に見上げる。 何かを危惧するその横顔に、鼓動が早くなるのを感じた。