ひりひりと頬が痛くて、触れる両手が温かい。
自分を真っ直ぐに見つめる芽の目が、幸の目によく似ていて好きだった。
「泣かないで、薫。薫は何にも悪くない。薫はとってもすごいんだよ、僕の自慢の弟だよ。だから自信を待って」
ね、と満面の笑みを浮かべた芽。
薫は目尻の雫を拭ってひとつ頷いた。
「じゃあお母さんを驚かせるためにも、祝詞の練習だ! 僕の教科書取ってくるから、薫はここで待ってて!」
薫の頭をぐりぐりと撫でた芽がかけ出す。
その時、稽古場の外から「芽さま! 芽さま!」と芽を探す声が聞こえた。
目を瞬かせた芽は振り向いて薫と目を合わせる。
「呼ばれてる、何だろ?」
「芽何したの……?」
「あ、ひどい薫! まだ何にもしてないよ! 行ってくるから待っててね」
稽古場の扉を開けた芽は「ここだよ!」と声を上げながら外に出た。
外が祭りの賑やかさとは違う感じに騒々しい。
どうしたんだろ……?
窓の格子部分を掴んでよじ登り外を覗いた薫は、数人の神職に背を押されて母屋へ向かう芽を見た。
不思議そうな顔をした芽がされるがままに歩き出す。