「薫は何の勉強してたの?」
「言祝ぎと呪の調整……でも僕言祝ぎはないから、声だけで調節しなくちゃいけなくて……まだよく分かんなくて……」
「凄い薫! もうそんな難しいこと勉強してるの? 神修の高等部から勉強することだよ!」
身を乗り出した芽に「そうなの?」と目を瞬かせる。
「でも僕まだ祓詞しかしらないし……」
「なら教えてあげるよ! どんなの出来るようになりたい?」
飛び起きた芽は興奮気味に薫に詰め寄る。
薫は目を伏せて小さく首を振った。
「ダメ……お父さんが祓詞しか奏上しちゃいけないって、だから他も教えてくれないの」
「そんなのおかしいよ! 薫は僕にできないことをしてるのに、どうして教えて貰えないの? お父さんは薫の力を怖がってるんだよ!」
眉をひそめた芽が腕を組んで声を上げる。
「だって僕もお母さんも全然平気だもん」
「でもお母さんはずっと具合悪いし……それって僕の呪のせいだって、みんな話してる……」
「そんなの皆が話してるだけでしょ? お母さんは薫のせいだって言ったの?」
言ってはないけど、と視線を落として指先をいじる薫の両頬を芽がぱちんと挟む。
「もし本当ならお母さんは薫と一緒に暮らさない、でしょ?」