「────次の神主に、なれって」





隆永の唇の端から息を飲む音が溢れた。

自分の肩を掴む手が小刻みに震えていて、自分の顔を凝視している。



「まさか、薫が……」



無意識に漏れた言葉は小さく、その続きは聞き取れなかった。

お父さん……?と薫は不安げに隆永を見上げる。


凝視されているはずなのに隆永と上手く目が合わない。その瞳は驚きと困惑で揺れている。

隆永は長い間黙り込んで、やがて薫と目を合わせた。



「────いいか薫、よく聞きなさい」



父親の声色ではなく、真言たち神職と話す時の宮司の声になった。



「ここで起きたこと全部、誰にも話してはいけない」

「どうして……?」

「どうしてもだ。自分の胸の中に秘めて、父さんがいいと言うまで決して口にしてはいけない」



あまりにも真剣な眼差しに「分かった」と頷くことしか出来なかった。