自分の白衣を必死に掴む手に「時期尚早だったかな」と自分を責めた。



「それで、本殿に、走ってきて、そしたら男の子がいて」

「男の子? 妖の子? 神職の子?」

「分かんない……でも、僕が今朝着てた服と、同じの着てたの」



少年の姿を思い出す。

黒い水干に紫色の羽衣を頭から被った、まるで人形のように綺麗な顔立ちの男の子だった。


隆永は目を見開いた。

バッと薫の体を離して顔をのぞき込む。



「薫、ここでその方にお会いしたのか!?」

「知らないうちに、いたの」

「何かお話されていたか!?」



あまりにも必死な顔の隆永に、何か自分が不味いことをしてしまったんじゃないかと表情を曇らせる。

やっぱり本殿へ入った事を叱られるのではと口を閉ざした。



「怒らないから言いなさい、その方と何かお話したのか?」



息を吐いた隆永が真剣な声でそう言う。

怒らない、という言葉を信じて恐る恐る口を開いた。



「そっくりで、見分けがつかないって。僕が泣いてるのが、"シンキクサイ"って……」



それから?と促されて、薫は言葉を続ける。