淡々とそういった少年に薫は困惑気味に視線を泳がせる。
「で、でも……神主さまは御祭神さまの神託で決めるんだってお母さんが」
「お前、本気でそれを言っとるのか? ならなかなかの笑いの感覚を持っておるな」
懐から出した扇子をばっと広げた少年が口元を隠して目を細める。
その視線にどきりとした。
「────決して折れるでないぞ」
少年はじっとこちらを見据えてそう言った。
「折れる……? えっと、骨をってこと……?」
「お前は今それを厭わしいと思っておるやもしれんが、我らが与えたもの全てに意味がある。それをゆめゆめ忘れるな、成すべきことを成せ」
少年の言葉は小難しく、何を言いたいのか薫には何一つ分からなかった。
ただ何となく、その少年は自分の持っている呪の力について話しているのだと思った。
「さて、そろそろ戻るか。隆永が勘づいたようじゃ。顔を見せても良いが、なかなか帰してくれぬから厄介なのじゃ」
半開きの戸を一瞥した少年に釣られるように振り返る。表がさっきよりも騒がしい。
何かあったみたいだ。
「あの、君は────」
視線を戻した薫は目を瞬かせた。少年の姿がなかった。