言祝ぎの子 参 ー国立神役修詞高等学校ー





「────今年の開門祭ね、僕も渡御行列(とぎょぎょうれつ)に並ぶんだって」


鎮守の森でいちばん高い柏の木で木登りをしていた薫は、先に上へ上へと登っていった芽に向かってそう叫んだ。

次の瞬間、バサッと木の葉がゆれて逆さ吊りになった芽が目の前に現れる。

薫は「うわっ」と声を上げて太い幹にしがみついた。


「ホントに!?」

「め、芽あぶない……」

「ホントに出られるの? 蛟龍(こうりゅう)のお衣装着る?」

「着る……。お父さんが神事に参加しても良いって。最近はね、朝拝もでてるし、祓詞も奏上してる」

「すごい、すごいよ薫! たくさん頑張ったんだね!」



逆さ吊りのまま手を伸ばした芽は薫の頭を抱きしめる。



わくたかむの社の御祭神はこれといって決まりはなく、八百万の龍神を御祭神として祀っている。それゆえに創建を祝う開門祭(かいもんさい)では、龍神に纏わる出し物が多い。

その中の一つ渡御行列(とぎょぎょうれつ)は龍神や龍神の子供蛟龍(こうりゅう)に扮して社内を練り歩く神事だ。


神事へ参加する事を許されていなかった薫は、いつもそれを幸と一緒に離れから遠巻きに見ていた。


「嬉しい、頑張ろうね薫!」



芽いたい、とその腕を叩きながら薫は頬を緩ませた。