幸の髪を手で梳いた隆永はその小さな額に口付ける。
そんなんで誤魔化されないからね、と幸は頬を赤くして隆永を睨んだ。
「二人とも、大きくなったね」
隆永はそう言って目を細めた。
「ん、もう十歳だよ」
「あっという間にこっから出ていっちゃうんだろうな」
「やめてよ……! 芽が寮に入っちゃったの、まだ立ち直れてないのに」
芽宛に神修の入学案内が届いた六歳の八月、それまで神修が全寮制である事を聞かされていなかった幸はそれはそれは大騒ぎした。
あんなに小さいのに寮なんて無理だ、寂しくなった時どうするの、そもそも私が芽から離れられないと騒ぎに騒いで、出発する直前まで納得が行かずに「寂しくなったらすぐに辞めて帰っておいで」と送り出す始末だ。
幸の願望とは反対に芽は友達にも恵まれ毎日楽しくやっているようで、長期休みの夏と冬と春休みくらいしか実家へ帰ってこない。
帰省する度に連休も帰ってきて欲しいという要望は伝えているが「皆と遊ぶ約束あるもん」と一蹴されている。
「芽もすくすく成長してるし、薫も順調に力を身につけてる」
「そう、よね。でもちょっと寂しい。せめてあと十年は"お母さん!一緒に寝よ!"って言って欲しかったな」
「俺以外の男と寝るなんて言語道断です」
「もう……息子に何言ってんの」



