「お母さん芽は……!?」
「薫! 障子壊れちゃうでしょ!」
「ごめんなさい……! ね、芽は?」
ドタドタと駆け寄ってきて身を乗り出す薫に苦笑いを浮かべる。
「まだだよ。今日が終業祭だから、今年も夕方頃に帰ってくるんじゃないかしら」
「なーんだ……急いで帰ってきたのに」
「ちゃんとお稽古してきた?」
「うん、今日はお父さんに一度も怒られなかったよ」
幸の膝の上に手を付いて、肩を竦めてはにかむ。
そんな薫に幸は目を弓なりにした。
薫は九歳になった、芽も初等部の四年生に進級して今日から夏休みが始まる。
「おじいちゃんが送ってくれた花火、今日芽とやってもいい?」
「そうね、みんなでやろっか」
「やった……!」
「その前に、薫もお勉強の時間ね」
顔を顰めた薫はしぶしぶ「はーい」と返事をする。
幸はそんな薫の頬を撫でて微笑んだ。



