2004年、夏。
鎮守の森で休む蝉たちの声が大きくなり、うだるような暑さが連日続いていた。
「よし、今日はここま────」
「ありがとうございました……っ」
わくたかむの社の本殿脇にある稽古場、修技館から脱兎の如く飛び出してきた一人の少年に、丁度前を通りかかった真言はぶつかりそうになり「うわっ!」と声を上げた。
「ごめん真言……!」
満面の笑みで振り返った少年に目を瞬かせる。
遅れて出てきた隆永に声をかけた。
「宮司。薫さまはまた脱走を……?」
「いや、最近はかなり真面目に取り組んでるよ。扱いも上手くなってきてる」
大急ぎで母屋へ戻っていく背中を見つめながら隆永は笑う。
「でしたら、何故あんなに大急ぎで飛び出していらっしゃったのです?」
「今日から夏休みだからね」
ああ、と真言が目を細めた。
薫は玄関から入るのももどかしく、濡れ縁に回って靴を脱ぎ捨てる。
勢いよく障子を開けると、中にいた人物はびくりと肩をふるわせた。



