「これ食べて。あのね、甘いものたべると、言霊の力が元に戻るの。だから薫の言祝ぎももどるかもしれない」
ポケットからくるまったハンカチを取り出した芽は手のひらの上で結び目を解く。
ハンカチの上にちょこんと乗せられたそれを薫の口に突っ込んだ。
あまりにも突然のことに目を白黒させた薫はやがてそれが口の中でじんわり溶けていくのに気が付いた。
「こんぺいとうだよ、青女房にもらったの」
「あおにょうぼう……?」
「ひとの姿の妖怪だよ、歯がまっくろの。夜の社頭でお菓子うっててね、遊びに行くといつもくれるの」
全部あげる、と薫の手に押し付けた。
「ごめんね、薫。嫌いになった……?」
「……なってない」
「良かったぁ……。僕は薫のこと大好きだよ」
小さな手で頭を撫でられた。芽はとても安心したように嬉しそうに笑った。
「あのね、学校行ってもね、たまに帰ってこれるから、その時に"しんしゅう"で習ったこと、薫におしえるね。そしたら薫も、学校いってるのと一緒でしょ?」
「いいの……?」
「うん。こんぺいとうも持ってくるね、これすき?」
「ん……すき」
「ふふ、僕もすき」



