突然怒鳴られたことと突き飛ばされて膝を擦りむいた痛みに、芽は顔を歪める。「早く!」幸にもう一度怒鳴られて、わっと泣き出した芽は転がるように走り出した。
その背中が見えなくなって、幸は薫を強く抱きしめる。
「薫、落ち着いて。大丈夫よ、大丈夫……」
「もういやだ、もういやだ! だいきらい、お父さんもお母さんも、芽も、みんなだいきらいッ!」
体の中を蝕むような激しい痛みを堪えながら薫をこれでもかと抱きしめた。
「ごめんね、薫……ごめんね……」
私が二人を、ちゃんと産んであげられなかったから。
でも薫には苦しい未来が待っていると分かっていても、どうしてもあなたに会いたかったの。
薫の小さな手が自分を叩いた。痛くないはずなのに、その度に胸に棘が突き刺さるような痛みが走る。
泣き疲れて眠りにつくまでずっと抱きしめ続けて、薫から寝息が聞こえ始めて顔をのぞき込む。
泣き腫らして赤くなった目が切ない。
ごめんね、とその瞼をそっと撫でた。
「────幸!? さっき芽から聞いて……ッ、何があったの!」
芽から話を聞いた隆永が転がるように部屋へ入ってきた。
その声を聞いて安心したのか、幸は意識を手放した。



