「そう、だね。薫も、神修に通えるようになるよ。ただ、芽と一緒に来年から通うのは、難しいの」
また薫の表情に影がさした。
幼い頃から感情を言葉に出さないように何度も言い聞かせてきた。それは薫自身や周囲の人たちを守るためでもあるけれど、こうして幼いながらに感情をこらえる姿にはいつも切なくなる。
「……どうして?」
必死に感情を押し殺した声で薫が尋ねた。
「お父さんとのお稽古がまだもう少し必要なんだって、それが全部終わったら、芽と通えるようになるよ」
「もう少しって、どれくらい?」
「それは────」
薫がひどく顔を歪める。
「薫……? どうしたの? やっぱりどっかいたい?」
不安げに手を差し出した芽の手を弾いた。
「────もう嫌だ」
薫の声色が変わったその瞬間、幸は身体中の肌が粟立つのを感じた。正面から首を絞められるような息苦しさに目を見開く。
間違いなく薫の言霊だった。
「どうして、どうして僕だけいつも」
「くゆ、る……駄目、それ以上言っちゃ────」
「いたいのも、もういやだ。全部、全部いやだ」
幸は咄嗟に芽の背中を突き飛ばした。数歩前に倒れ込んだ芽は何事かと目を瞬かせる。
「母屋に帰りなさい……ッ!」
幸は薫を胸に抱きしめてそう叫んだ。



