隆永が声を荒らげた。その声に目が覚めたのか薫が頼りない声で泣き始める。
慌てて幸から受け取ろうとして、幸は胸に薫を抱きしめた。
隆永が歯を食いしばる。
「芽にも幸が必要なんだよ……」
「分かってる。もちろん芽も同じくらい愛情を注ぐし寂しい思いはさせない。でも薫には私しかいないの。こんなにも寂しい場所で、一人きりになんて出来ない……! だから許して……ッ」
自分が頼めば、隆永が拒否できないのを知っていてそう言った。
案の定隆永はひどく顔を歪めて俯く。
そんな隆永の肩にもたれかかった。
「いつも、心配ばっかりかけてごめんね」
「分かってるなら、少しは俺の気持ちも汲んでよ」
「……ん、ごめんね」
その日から、幸は薫と離れで、隆永は母屋で芽と暮らすようになった。
そして薫が三歳になった歳から、隆永のもとで呪を抑える稽古が始まった。詳しい事は教えて貰えないが、毎日泣きながら帰ってきては身体中に生傷を作ってくる薫の様子から、生易しいものでは無いことは分かった。
薫に取っては必要な事で、隆永が心を鬼にして接していることも分かっている。
ただ幼い薫がそれを理解できるはずもなく、それが幸にとっては心苦しかった。



