「起きてて平気?」
「うん。今日は調子いいみたい。最近は薫も落ち着いてるし」
「でもそろそろ形代は変えようか」
「ありがとう」
うん、とひとつ頷いて隆永は箪笥の引き出しから薄い桐の箱を取り出す。
その背中を見つめながら、幸は双子が産まれた日のことを思い出した。
自分は気を失う直前に、次男の薫を無事出産することが出来たらしい。
しかし長男の芽に言祝ぎが偏ったことで、薫の存在自体が呪になってしまい、自分は呪いにあてられた。
けれど今こうして生きていられるのは、全て隆永のおかげだった。
隆永が毎晩奏上してくれていた安産祈願祝詞は、言葉通り出産の安全を願う祝詞だった。それに加えて、形代と呼ばれる人の形を模して切った和紙を用意していたことで、一命を取り留めたのだ。
形代は人の身代りになって罪や穢を移す道具、幸が被った呪いを形代に移すことが出来たからだ。
上手くいくかどうかは最後まで分からなかった、と目が覚めた時に隆永は泣いてそう言った。
今はまだ赤ん坊だから形代に移すことで何とかなった。けれど子供が成長するにつれ、呪の総量も増えていく。いち早く自分自信で呪を抑えられるようにならなければいけない。薫は誰よりも苦労するだろう。



