絆創膏を貼ってやれば、また胸に顔を埋める。


「いつものやって……」


唇を尖らせてそうねだる姿に微笑む。


「ふふ、はいはい。……痛いの痛いの、飛んでいけ。痛いの痛いの、飛んでいけ」


優しく背を叩きながら囁くように言葉を紡ぐ。


この声でこの子の痛みが和らぎますように。


自分に特別な力は無いけれど精一杯そんな気持ちを込めて囁く。

暫くそうしているうちに、安らかな寝息が聞こえ始める。そっと顔を覗き込めばあどけない寝顔があった。

自分の布団に寝転がらせてそっと腹に布団をかける。


ちょうどその時、廊下側の障子に人影がさして、すっと開いた。



「幸?」

「隆永さん」

「またここに逃げ込んでたのか」



心地よさそうにすやすやと眠る姿に険しい顔をした隆永は息を吐いて歩み寄った。



「ここに逃げてくれば、助けてもらえると思ってるのよ」

「甘やかしちゃダメだっていったろ。薫には必要な事なんだ」



そうは言いつつ、隆永がいつも薫が疲れて眠った後に様子を見に来ていることを知っている。



「ふふ、分かってるよ。でも、薫を甘やかしてくれる大人も必要だと思うから」


そう笑って薫の頭をそっと撫でる。

呆れたように息を吐いた隆永は、幸の隣に腰を下ろした。