「久しぶり――」
僕がクスノキの前に立って、そう声を掛けると、ミリは穏やかに目を細めた。
「お父さん、久しぶり!」
眉尻を下げて笑って言った、ミリに僕はぎゅうっと抱きついた。
ほんのりと甘い香りがした。
「甘い香り……」
そう呟くと、ミリは「ああ、さっきね、ケーキ食べたんだ!」と嬉しそうに微笑んだ。
そのとき、ミリの後ろから、五年前と変わらず無表情の佐々原さんが現れた。
ぺこり、と頭を下げてきて、僕はミリから離れてぺこりと頭を下げ返す。
「お父さん、少し老けたね」
笑顔でミリは小さい声で言って、僕はショックを受けつつも事実なので、苦笑して頷いた。
「さあ、家に帰ろう!」
ミリは優しく微笑んで、僕の手を握った。