みんなから愛されたい。
 でも、鬼の子だから愛してもらえない。心の底にずっとあった想い。

 私はずっと、愛されたかった。
 誰からも愛してもらえないと思っていた。

 幼い頃にぎゅーっと抱きしめて欲しかっただけなのに突き飛ばされたり、手を繋いでもらったことがなかった。私は鬼の子だから、両親からも愛されていないと思っていた。
 目の前の母は、自分の過去の行いを後悔していて肩を震わせて泣いている。

 私のために泣いてくれる人がいる。
 嬉しくて肩を振るわせて泣きじゃくった。脳裏に居座る、暗闇にしゃがみこんでいる幼い頃の自分に教えてあげたい。

 あなたは愛されているよ、と。
 感情に歯止めが効かなくなった私は、子供のように泣き続けた。

 子供の頃の分まで抱きしめてくれるように、強くぎゅっと抱きしめてくれた。声を上げて泣く私は、まるで子供のようだ。幼い頃の自分が心の中で泣いていたのかもしれない。今まで堰ためていたものが崩れ落ちるように涙が止まらなかった。



「花純の好きなように決めなさい。どちらの選択をしても、お母さんは花純を受け入れるから」

 その言葉が私の胸の中に浸透していく。
 愛されていると、こんなに幸福に満ち溢れるんだ。雨に濡れて冷え切った体とは反対に心の底から湧き上がるあたたかい感情。荒れていた心が安らいでいく。

 ありがとう、お母さん。