いつからだろうか。俺より背の低かった拓海は俺より少しだけ背が高くなって、いつの間にか拓海の方が俺よりもずっと、将来について考えるようになった。

いつまでもこのままじゃいられないのに、俺はいまだに自分の将来がよくわからない。 

何がやりたいのか。
どうしたいのか。
わかんない。
決めきれない。

難しいことなんて何も考えずに、ただ拓海と並んで同じ道を歩めたらどんなにいいだろう。


「葵、帰ろっか」

「……おう」

俺は何とも言えない感情が心に渦巻きながらも、今日も拓海と一緒にいつものように家まで帰れることにほっとする。

なんだか恥ずかしくて絶対に口には出せないが、家族や兄弟以上に隣に拓海がいると安心する。

このままずっと一緒に隣で歩いていけたら、なんて叶うわけない願い事を七夕の度に星空に願っていることを俺は誰にも言ったことがない。

でも本当はどんなに願っても叶わないことをもう随分前からわかってる。

いつまでも子供じゃいられないから。年を重ねて大人と呼ばれるモノになっていかなきゃいけないから。

でも今だけはまだ気づかないままをしていたい。知らないフリをして子供のままでいたい。拓海の隣にいたい。


「……ずっとこのまま歳とらなきゃいいのにね」

俺と同じようなことを考えていたのかもしれない。拓海はオレンジ色の空を見上げながら、そうポツリと呟いた。