そのまま拓海は俺の手のを引いたまま、スニーカーが濡れるのも構わずザブザブと海へと入っていく。

「げ! つめたっ! おい拓海っ! 靴濡れたじゃんか」

「あはは。そぉれっ」

拓海がケラケラ笑うと、海水の中に手を差し入れて俺めがけてパシャンとかけた。

「おいっ! 何すんだよっ」

俺も負けじと両手で海水を掬うと頭から拓海に向かってかけてやる。

「わぁっ! 葵冷たっ!」

「はははっ、今の拓海の顔ウケる」

「お返しっ」

俺の全身が海水でびしょ濡れになる。

「おいっ! マジか……」

「あはははっ」

夜の海水の冷たさと、口に広がるしょっぱさが、ただただ心地いい。拓海と大声をあげて笑えば自分の中の不揃いのモノが全てがルービックキューブのように揃えられていく。

俺たちはバカみたいにはしゃぎ、全身びしょ濡れになりながら、満点の夜空の下で腹の底から笑い合って、何度も暗闇の先にある見えない水平線に向かって叫んだ。

もう迷わないように。
互いの信じあう心を確かめ合うように。